ローコスト住宅はなぜ安いのか

世間一般の人が抱くローコスト住宅のイメージは、はっきり言って良くありません。
値段が安いのだから、その分質も悪いのだろう、と考えている人が非常に多いです。

「ローコスト」を謳っているとは言え、住宅はやはり大きな買い物です。一生に一度あるかないかの高額な買い物ですから、絶対に失敗したくありません。
リスクを避けるためにローコスト住宅を選択肢から外し、少し無理をしてでも大手ハウスメーカーの住宅を買おうとする人も多いです。

参考:ローコスト住宅メリット・デメリット

確かに、中には質の悪い住宅ばかりの業者や、トラブルを起こしやすい業者もいます。
特にローコスト住宅が登場したばかりの頃は、広告では安くても、実際に家を建ててみたら高くついただとか、質の悪い建材を使用したことで問題が発生したであるなどのトラブルが報告されていました。

しかし現在では、そうした質の悪いローコスト住宅は減り、安くとも住みよい住宅が提供されるようになっています。
こうした背景には、コストカットに取り組む企業努力と、安くなければ住宅が売れなくなってきたという経済状況の変化があります。

今回は、ローコスト住宅の現状と、安さの理由について考えていきます。

◇ローコスト住宅と経済状況
敬遠されがちだったローコスト住宅が存在感を増してきた理由の一つに、経済状況の影響があります。

住宅を購入する際には住宅ローンを組むのが普通です。住宅ローン組むと、何年もの間毎月一定額を支払い続けることになります。
毎月の住宅ローンが毎日の生活に与える影響は大きいです。もし住宅の購入価格を低く抑えることができれば、生活にゆとりが出ます。

長期固定金利の住宅ローンの一つにフラット35という住宅ローンがあります。
このフラット35の利用者を対象とした調査では、2016年の住宅建設費の平均は全国で3308万円です。3308万円の住宅ローンを金利1.120%、35年間で組んだとすると、毎月の返済額は9.6万円になります。
実際はこれに土地の取得や様々な出費が重なることになるため、ローンの借入額はもっと大きくなることでしょう。

3308万円のローンと聞くとあまりピンとこないかもしれませんが、毎月10万円近い出費が35年間続くとなると、かなり大きな負担であることが分かるはずです。

厚生労働省の平成28年度の調査によると、世帯収入の平均は545万円です。しかし、平均所得金額以下の割合、つまり年収が545万円に満たない世帯が全体の61.4%もいることが分かっています。平均は545万円ですが、中央値は428万円です。一部の高額所得者が平均を引き上げているにすぎず、年収が500万円に満たない人のほうが多数であることがわかります。

年収の8割が手取りとすると、428万円の8割で約342万円が実際に使えるお金になります。これを単純に12で割ると月約29万円の収入になります。
ここから毎月9.6万円を住宅ローンの返済に充てると、一ヶ月に使えるお金は約19万円ということになります。

収入は世帯単位で考えていますから、この19万円で家族全員が生活することになります。毎月の食費や光熱費、子どもの教育費、保険料、老後のための貯金もここから捻出しなければなりません。家族の人数にもよりますが、あまり贅沢は出来ませんし、余裕もそれほどありません。病気や怪我など突然の出費が発生すれば、家計簿を見ながら頭を抱えることになるでしょう。
住宅ローンの支払いを考えると、とてもじゃないけれど家なんて買えないと結論づけてしまうかもしれません。

しかし住宅そのものの値段が安くなれば、住宅ローンの借入額も毎月の返済額も少なく抑えることが出来ます。毎月の生活にゆとりもできますし、家を買おうと思うことができます。
買い手にとっても、売り手にとってもローコスト住宅が求められる時代になっているのです。

◇ローコスト住宅の変化
●ローコスト住宅に対する不安
ローコスト住宅に需要は増えている一方で、低価格の住宅に対する心配や不安は根強いです。

ローコスト住宅への不安としてよくあげられているのは、以下のようなものです。

・価格を抑えるために建材質を落としており、品質や安全面に問題がありそう
・安いのは規定通りの家をつくったときだけで、実際に要望に応じて建てていくと高くつくのではないか
・断熱性や気密性に乏しく、省エネ性能が今後求められるレベルに足りないのではないか

こうした不安の声が上がるのは、どうして安くできるのかあまり知られていない、という事情があります。ローコストを実現できている理由がわからないため、何か悪いことをしているのではないかと疑ってしまうのです。

●ローコスト住宅の変化
一昔前のローコスト住宅は、性能は二の次でともかく安くつくるという住宅が多数ありました。安かろう悪かろうの典型で、品質も低く、トラブルも頻繁に起こっていました。
ローコスト住宅に対する不信感は、当初の品質の悪さによって形成されたもので、業界の自業自得な面があるのは否めません。

しかし、ローコスト住宅そのものも、住宅を取り巻く環境も変わってきています。住宅価格を下げなければなかなか住宅は売れず、企業努力でコストカットを徹底しなければ生き残れません。
最初から安上がりに家を建てようとするのではなく、コストカットを重ねることで普通の家がローコストで提供するというやり方に変わってきているのです。

では、低価格で安定した品質の住宅を提供するために、一体どのような工夫が行われているのでしょうか。いくつかの例を紹介します。

●仕入れの効率化
同じ建材を使用するのでも、仕入れのルートを変えれば品質は落とさず安くすることができます。

仕入れは複数の業者を介するのが普通で、いろいろな業者が間に入る度にマージンが発生します。
メーカーから仲卸業者へ、仲卸業者から専門業者(例えばサッシであればサッシ専門の業者、床材であればそれが専門の業者など)へ、そして専門業者から実際に工事を行う建築会社へ、という流れです。
当然、仲介する業者が多いほどマージンが増えるため、部材のコストも上がります。

規模の小さい業者が自力で検査位を手配したり、直接メーカーとやり取りをしたりするのは大変で、業者にとってもメーカーにとっても非効率的です。そのため、このようにいろいろな業者を間に挟むというものの流れになっています。
しかし消費者からすると、いろいろな業者を挟んでいるだけで物の値段が上がっていくのは、やはり気持ちのよいものではありません。

例えば、最初にメーカーが販売する価格が10万円でも、業者を挟むごとに20%のマージンが発生するとしましょう。すると建材の価格は、
10万円→12万円→14.4万円→17.28万円
と増えていきます。3番目の業者を介するころには、1.5倍以上の価格になってしまうのです。こうして値段の上がった建材をたくさん使って家を建てれば、価格が高くなってしまうのは道理でしょう。

だからといって、全ての建材や部材をメーカーから直接仕入れるのは現実的ではありません。ある建材については仲介する業者をひとつ減らし、ある金物については直接メーカーから仕入れる……そうした一つひとつの積み重ねをしてゆくことで、全体として住宅価格を抑えることに成功しています。

●効率的な工法の採用
家をつくる材料だけでなく、どうやってつくるかという部分についても効率化が可能です。

例えば木材の加工を考えてみましょう。
家を建てるには決まった長さにカットした木材が必要になります。木材が自然のものである以上、形を揃えるにはどこかで加工が必要になります。
しかし、木材の形や長さを揃える加工をいちいち建築現場で行うのは非効率的です。加工に時間が掛かって工期が延びるだけでなく。木材の加工ができる職人が現場にいなければならないため、人件費もかかります。
そこで、あらかじめ別の場所でまとめて木材を加工し、その後現場に持ち込むように手順を変えます。そうすれば、現場で加工する分の時間を節約できますし、木材を加工するための職人も道具も置かずに住みます。加工された木材の品質確認もまとめて行えるため、安定した品質の建材を確保することにもつながります。

●広告の削減
顧客の確保にはまず「存在を知ってもらう」ことが重要になります。そのために。ハウスメーカーや工務店はテレビや雑誌、新聞やチラシなどに住宅の広告を出します。
しかし、広告や宣伝には多額の費用がかかります。

徹底した効率化によりコストカットが進んでいるはずの大手ハウスメーカーの住宅価格が高いのは、こうした広告宣伝費が住宅価格に上乗せされているためです。
大手ハウスメーカーの名前を誰もが知っているのも、「大手だから」という安心感もこうした広告効果の賜物ではありますが、安く家を建てるには広告宣伝費も削らなければなりません。

しかし、全く広告も宣伝もなくすわけにはいきません。安く家を建てられるということも、住宅の品質に問題がないことも、宣伝しなければ消費者には伝わらないからです。
そこで、ローコスト住宅を扱う会社では、家を買おうとしている人に出来るだけ効率よく届くように、最大限の工夫をして宣伝をしています。

●人件費の削減と効率化
ビジネスの世界では、会社の利益に直接貢献しているのは全体の2割のヒトやモノであるといわれています。極端な話、この無駄な残り8割にかかっているコストをカットすれば、住宅の価格もぐっと下げることができるはずです。

実際にそんなことは不可能ですが、今まで8人必要だった仕事を作業や社内システムの効率化で7人にすることは可能です。社員教育を行うことで、利益に貢献する人間を2割から3割にする事もできます。

●ローコストの理由を知ることが大切
住宅の品質を下げずに価格を抑えることができるのは、その裏に様々な工夫が存在しているからです。
ローコスト住宅を扱う会社を選ぶ際に重要なのは、どんな企業努力によって安さを実現しているのかを知ることです。

どうして安いのか、どんな工夫をしているのかを調べ、チラシやパンフレットを見ても理由が分からないようなら、直接営業の人などに尋ねるようにしましょう。明確な答えが貰えなかったり、すぐに返事がなかったりするようであれば用心するべきでしょう。

◇安かろう悪かろうの時代は終わりつつある
ローコスト住宅が低品質だというのは昔の話です。
今は消費者も低価格な住宅を求めており、ローコストな住宅でなければ売れにくくなっています。

ローコスト住宅が怖いからといって、無理して高価な住宅を購入してしまうと、ローンの返済に追われるばかりで、せっかくの新居での生活も楽しくないものになってしまいます。

信頼できるローコスト住宅メーカーは、色々な工夫によって質を落とさずに購入しやすい住宅を提供できるように努力しています。
そうした良いローコスト住宅を見つけるためには、なぜ低価格を実現できているのかをしっかりと知ることが重要です。